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彼のことだから、きっと私が望めば今後もエスユーイノベーションで働かせてくれただろう。明確に話したことはないものの、それは間違いないはず。
(翔は私には言わなかっただけで、最初から期間限定のつもりでこの話を持ち掛けてくれてたってことだよね。それって、もしかして……)
まだ確信はないけれど、翔は私を美容師に復帰させるように導いてくれるつもりだったんだろうか。そうじゃなくても、彼の中にはなにかしらの思惑があったに違いない。
さもなければ、そんなことを最初から鵜崎副社長に話したりしないはずだ。
「そういうわけだからこちらとしては当初の予定通りだし、気にしないでね」
ひとり考え込んでいると、副社長は場を明るく照らすように微笑んだ。
「それで、退職は三月末でいいのかな? 希望があれば調整できるよ」
「ありがとうございます。ですが、三月いっぱいで退職させていただきます」
東京にヘアサロンはたくさんあるし、正社員にこだわらなければ働くことはできるだろう。ここにいさせてもらえれば安心だけれど、スタイリストとして早く復帰するためには、たとえバイトであってもヘアサロンで働く方がいいはず。
これを翔に話すと、彼も賛成してくれた。
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