Bloom 10 七転び八起きも、あなたの傍でなら

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「わかった。もしなにか困ったことがあれば、いつでも相談してね」 短期間しか働いていないのにこんな風に言ってもらえて、本当にありがたい。 エスユーイノベーションのスタッフはみんな人柄がよく、信頼関係が築けているのがよくわかる。私の次の就職先もこういう場所だといいな、と思った。 「そういえば、香月さん話し方や言葉遣いがよくなったね。来客対応も何度かしてくれてたけど、最初の頃より笑顔も見られるようになったし」 「いえ、そんな……恐縮です。ですが、私の話し方や言葉遣いについては、最初に篠原さんが指導してくださったおかげなんです。あのとき、篠原さんがきちんと言ってくださらなければ、私は変われていなかったと思います」 笑顔で篠原さんを見ると、彼女は一瞬驚いたように目を見開いたけれど、すぐに「当然のことを指摘したまでです」と返されてしまった。 「篠原さんに叱られちゃったか。彼女は、俺や翔にもはっきり言うからね」 鵜崎副社長は肩を竦めたけれど、篠原さんを見る眼差しはとても優しかった。もしかして、と過った考えは口にはできない。ただ、なんとなく当たっている気がした。 彼女は副社長の視線を特に気にする素振りもなく、なにか言いたげに私を見据えていたものの、口が開かれることはなかった。
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