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翌日、早速それぞれに電話をすると、大手サロンには渋い反応をされたけれど、意外にももうひとつの『hair salon Douceur』のオーナーは歓迎してくれた。
しかも、『今日でもいいよ』と言ってもらえたため、善は急げという気持ちでお願いした。
本店である南青山店には、四十代後半のオーナーの他に女性スタイリストがふたり、そしてアシスタントの男性がひとりいた。他の店舗もスタッフの人数は同じで、麻布十番店はオーナーの奥さんが、恵比寿店は別の男性が店長をしているそうだ。
「うちのコンセプトは、店の名前通り『優しさと心地好さの提供』ね。ひとりひとりのお客様としっかり向き合って、施術でも精神面でも最高のサービスを提供できることを目標にしてるから、そのために妥協は一切しない」
厳しい口調のオーナーは威圧感がある。声音からは容赦のない雰囲気が漂い、男性だということもあって萎縮してしまった。
「試用期間中は麻布十番、恵比寿、うちの順番で一ヶ月ずつアシスタントをしてもらう。店長全員から合格をもらえたら、うちのスタイリストになるために三人のスタッフの施術をして、それにも合格したら晴れてスタイリストだ」
さらりと説明されたけれど、それぞれの店長がどんな人かもわからない今の状況では、どんなものになるのかが想像しにくかった。
「ちなみに、合格をもらえない店舗があれば、そこでまた一ヶ月アシスタントをして再試験に臨んでもらうから。スタイリストになるための試験は三日間で、毎日ひとりずつ施術をして店長全員で合否の判断をする」
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