Bloom 10 七転び八起きも、あなたの傍でなら

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* * * 暦は、三月下旬。 桜の木がつぼみを膨らませ、桜の名所に並ぶ木々は八分咲きになるというところ。 今日で、エスユーイノベーションを退職することになった。 手が空いたタイミングでひとりひとりに声をかけ、感謝を伝えていった。木野さんは涙を浮かべながらも、「応援してるからね!」と笑みを浮かべていた。 重役室にも向かい、鵜崎副社長と翔にも感謝を告げる。 副社長は私たちの関係をとっくに聞かされていたようで、「これからも翔をよろしく」なんて微笑まれてしまい、どんな顔をすればいいのかわからなかった。 翔は「今日までお疲れ様」と社長としての労いをくれ、私はもう一度頭を下げて重役室を後にし、ミーティングルームの片付けをしている人に会いに行った。 「篠原さん、少しお時間よろしいですか?」 「ええ」 「今日まで本当にお世話になりました。短い間でしたが、色々とご指導いただきありがとうございました」 「こちらこそ、ありがとうございました。副社長もおっしゃっていたように、うちとしては貴重な戦力を失くすことになりますが、新しい職場でも頑張ってください」 篠原さんはきっと、お世辞は言わない。だから、認めてもらえていたんだと知り、つい笑みが零れた。
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