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篠原さんの仕事ぶりは相変わらずのようだった。以前までの私だったら、こんな話を聞けば不安や嫉妬を覚えたかもしれない。
けれど、今は素直に彼女を尊敬している。
篠原さんがかけてくれた言葉を翔に話したとき、彼女が上司のパワハラとセクハラで前職を辞めてエスユーイノベーションに来た……と彼から聞いたからだ。
『卑怯な人たちなんかのために、自分の意志を曲げてはダメよ』
それを知ったあとからは、篠原さんの言葉がより深いものとなり、改めて心に留めおいた。同時に、彼女がなぜ最初に私に不快感を見せ、厳しいことを言ったのか、さらに理解できた。
篠原さんは、つらい目に遭っても自分の足で再び居場所を見つけ、必死に努力した人だ。そんな彼女から見れば、あの頃の私は甘ったれた人間でしかなかった。
篠原さんと比べてしまうと、どうしても自分の不甲斐なさが浮き彫りになって、ダメだった部分がよくわかる。つい落ち込んでしまいそうになるけれど、そうじゃなくて今後に活かせればいいのだ……と思うようにしている。
人生は色々あって当たり前だ。
それをどう乗り越えて糧にするか、それができなくてもどんな風に向き合うかで、きっと変わっていける。
最近になって、ようやくそう思えるようになった――。
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