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八月五日から七日の三日間で試験を受けた私は、結果が出る今日、言いようのないほどの緊張感に包まれていた。
今回の結果がダメだったとしても、またチャンスはもらえる。けれど、そんな気持ちでは結果がついてくるとは思えなくて、決死の覚悟で受けた。
だからこそ、緊張も大きくなり、今朝は翔の前でも上手く笑えなかった。それなのに、彼はそんな私のことを抱きしめてくれた。
『志乃なら大丈夫。もっと自分を信じてもいいと思うよ』
翔は、玄関先で見送る私に優しい笑顔を見せ、いつものようにキスをした。自分自身を信じるのは難しくても、彼のことは信じられる。
鎖骨で輝くネックレスに触れて翔の笑顔を思い出せば心は幾分か軽くなり、お店の前に着くと一思いにドアを開けた。
「おはようございます」
「おはよう。悪いね、早く来てもらって」
先にオーナーと夏さんが来ていて、ふたりは顔を見合わせたあとで私を見た。
「じゃあ、あまり時間もないから結果を伝えるね」
オーナーの神妙な声が、この場の空気を揺らす。
心臓がバクバクと脈打ち、無意識にこぶしを握る。オーナーを見つめ返しながら、息を止めてしまいそうだった。
直後、オーナーの手が目の前に差し出された。
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