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「おめでとう。来週から晴れてドゥシュール麻布十番店のスタイリストだ」
お礼を紡ごうとした唇が震える。胸の奥からは激しい熱が込み上げ、鼻がツンと痛くなる。
数秒も経たずに心は喜びで満ち、瞳に浮かぶ涙を拭ってオーナーの手を握り返し、頭を下げた。
「ありがとうございます……っ! これからも頑張ります!」
「志乃ちゃん、おめでとう。言っておくけど、私は甘やかさないから覚悟しててね」
望むところだ。
きっと、ドゥシュールでなら、私の夢をもっと輝かせられる。そのための努力なら惜しまないし、憧れの人のもとで働ける幸運をムダにする気はない。
「明後日から十六日まではお盆休みだし、今日はこのまま夏と麻布十番店に行ってもらうよ。十七日の午前中は少し練習して、午後からはデビューだ」
来週のことを考えてワクワクした。不安もあるけれど、それよりも胸が弾んでいる。
翔に早く言いたい。また一歩進めたことを伝えれば、彼は自分のことのように喜んでくれるはず。
そんな翔の姿を想像すれば、彼に早く会いたくなった――。
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