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「大丈夫か?」
そのさなか、気遣うように声をかけられ、慌てて顔を上げた。
「は、はい……。あの――っ」
視界に入ってきた顔を見て、続けるつもりだった言葉を飲み込んでしまう。
見開いた目は、瞬きも忘れて目の前の人を凝視していた。
助けてくれたのは、諏訪くんだったのだ。
「……香月?」
「えっ……あ、はい、平気で……っ! あ、ごめんなさい……!」
彼にじっと見つめられて頷いたとき、抱きしめられていることに気づいて咄嗟に飛びのいた。
温もりが離れたことで風が触れたせいか、全身に悪寒が走る。
「いや、俺の方こそごめん。勝手に触ったりして、気持ち悪かったよな」
「そんな……!」
慌てて首を横に振るけれど、きっと説得力はない。
助けてくれて嬉しい……と言いたいのに、諏訪くんを前にしたせいか言葉が上手く出てこなかった。
「香月、歩ける?」
「う、うん……」
彼に顔を覗き込まれ、反射的に頷く。
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