エピローグ Side 翔

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プロポーズは特別な日にしたいと思っていた。 再会した日、志乃の誕生日、付き合った記念日。 候補はたくさんあれど、俺が選んだのは十月十五日。 なぜその日にしたのかを、きっと彼女は知らないだろう。 まさか夢を語り合った日付まで覚えていた……なんて、さすがに未練がましくて言えるわけがない。言い訳するのならば、記憶力はそれなりにいい方で、その上でたまたま覚えやすかった日だからだ。 高校時代、偶然耳にした志乃の誕生日が自分と二ヶ月違いであることを知り、夢のことを話したのがちょうど俺の誕生日の半年後だった。 日付がすべて十五日というのがまた記憶に残り、十年経った今もしっかりと覚えている。 ちなみに、お互いの夢を話すに至った経緯は、放課後の図書室で俺がプログラミングの書籍を手にしていたから。 図書委員で残っていた彼女が探していた本を見つけてくれ、気がつけば誰にも話したことがなかった目標を打ち明けていた。 あの日の夕日に照らされた志乃は、息を呑むほどに美しかった。心のすべてを奪われるようで、彼女の表情から一瞬たりとも目が離せなかった。 記憶に焼きついたままの俺だけの思い出の日を、志乃にとっても特別な日になるようにしたくて。そんな邪な考えのもと、プロポーズをしたのだった――。
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