Bloom 2 災い転じて同居が始まる

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指導係になった先輩の男性スタイリスト――平岡(ひらおか)さんとふたりで残り、ヘッドスパの練習をさせてもらっていたとき、彼の手が私の胸元をかすめたのだ。 驚いて声を上げた私に、彼は『これくらいで動揺しちゃダメだよ』と悪びれなく笑った。『お客さんの中にはもっとがっつり触ってくる人もいるよ?』と、まるで当たり前のように言われて体が硬直した。 怖くて、気持ち悪くて、逃げ出したいのに……。『早く続けて』と指示されれば、逆らうことはできなかった。 自衛のためにできる限り体を離せば『もっとちゃんとしてよ』と叱られ、『やる気がないなら指導しなくてもいいけど』と言い渡される。スタイリストへのデビューが遠のくのが嫌で、言われた通りにやるしかなかった。 私の胸は華奢な体型に反してどんどん成長し、中学生の頃から異性の好奇の目にさらされていることに気づいていた。そのせいで同年代以上の男子が苦手になり、日に日に異性からの視線に怯えるようになった。 初対面では胸を見られ、街中や電車でも性的な目を向けられたことは数え切れないほどある。だから、そういったことに過敏な自覚もあった。 平岡さんの態度だってたまたまかもしれない……と自分自身に言い聞かせ、私なりに必死にかわしながら仕事をひとつずつ覚えていった。 けれど、最初は彼だけだった態度が他のスタッフにも広がっていき、冬になる頃には男性スタッフの半分から体を触られるようになっていた。
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