Bloom 2 災い転じて同居が始まる

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* * * 「なにがあっても辞めないって決めてたんだけど、お客様のカウンセリング中も話が頭に入ってこないから、全然仕事にならなくて……」 諏訪くんには詳細までは話さなかったけれど、指導係のスタッフからのパワハラとセクハラがあった……ということだけを打ち明けた。どんなことをされて、なにを言われたのかまでは、情けなくて恥ずかしくて言えないから……。 「それは香月が悪いわけじゃないだろ」 「でも……私の事情はお客様には関係ないから……。お客様の要望に一〇〇パーセント応えるのは難しいけど、限りなくそこに近づけるようにして、できればもっといいものを提供できなきゃいけないのに……。カウンセリングすらまともにできないなんて、話にならないもの」 診療内科には通ったものの、仕事を辞めてしまえば動悸はなくなった。今年に入ってから四月の中頃まではろくに食べられなかったけれど、食欲もようやく戻った。 今でもさっきみたいなことがあれば身が竦むものの、男性と話すことはできる。もちろん、まったく平気なわけじゃなくても、日常生活に支障はない。 ただ、退職後すぐに平岡さんから【ホテルで会おう】といった内容のメッセージが届いたことがあり、まだ安心し切れないのだけれど……。 「あのさ、香月」 不安と先の見えない現状にため息を漏らすと、諏訪くんが神妙な面持ちになった。彼は私に一歩近づき、しゃがんでから私をじっと見つめた。
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