Bloom 2 災い転じて同居が始まる

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「もしよければ、うちで働かないか?」 「え?」 予想外の言葉に、目を丸くする。 「仕事は事務関係だし、特に資格や経験がなくても構わない。わからないことは俺が教えるよ。俺が無理なときは、誰か女性スタッフについてもらうようにする」 諏訪くんは本気のようで、彼の表情も声音も真剣そのものだった。 「うちの会社はスタッフが少ないし、信頼できる人しかいない。来客もあるけど、俺の目の届く範囲なら香月を守ってあげられるし」 ただの同級生で、会ったのは高校の卒業式以来。友人と呼べるのかも怪しいほど接点がなかったのに、諏訪くんがそこまで言ってくれることに驚きしか生まれない。 「高給ってわけにはいかないけど、都内で普通に生活できるくらいの給料はちゃんと出せる。家財付きの寮も用意するし、少なくとも最低限の衣食住は保障できるよ」 「で、でも……」 彼の好意は嬉しいけれど、さすがにそこまで甘えていいのかわからなかった。 「赤塚の家は今月中に出ないといけないんだろ? 実家にも頼れないなら、せめて住むところだけでも確実に確保した方がいいんじゃないか?」 そんな私をたしなめるように、諏訪くんが静かに現実を口にする。 確かに、彼の言う通りだ。 このまま敦子の家を出てもすぐに仕事が決まるとは限らないし、下手をすれば路頭に迷う。もっとも、さすがにそうなる前に実家に頼るとは思うけれど……。仕事を辞めただけでも申し訳ないのに、家族にこれ以上の心配はかけたくない。
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