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「敦子、おもしろがってるでしょ。っていうか、諏訪くんは親切にしてくれてるのに、そんなこと考えるのは失礼だよ!」
「そうかなぁ。諏訪くんだって、どうでもいい相手にそこまでしないと思うけど」
「そんなことないよ。諏訪くんは優しい人だもん」
唇を尖らせて異議を申し立てる私に、彼女が苦笑混じりに肩を竦める。それから、優しい眼差しを向けられた。
「まぁ、こんなに突然出ていくとは思わなかったけど、私も安心した。うちにはあと半月しかいられないし、私も引っ越し準備を始めると志乃のことは助けてあげられなかったと思うし」
「たくさん迷惑かけてごめんね。でも、長い間置いてくれてありがとう」
「なに言ってるの。これくらい当たり前だからね! 志乃だって、逆の立場だったら私を置いてくれたでしょ? 困ったときはお互い様! それに、同棲や結婚生活が嫌になったら、今度は私が志乃の家に押しかけるから! おいしいご飯食べさせてね」
冗談めかした敦子に「もちろん」と返したあと、顔を見合わせてクスクスと笑う。
迷惑をかけてしまったけれど、この一ヶ月ほどは楽しいことがたくさんあったし、なによりも彼女に傷を癒してもらった。本当にどれだけ感謝しても足りない。
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