Bloom 2 災い転じて同居が始まる

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約束の時間の五分前に迎えに来てくれた諏訪くんに、敦子は「志乃をよろしくね」とまるで母親のように言い、彼は真剣な顔つきで頷いていた。 その光景を見ていた私は、少しだけくすぐったいよな面映ゆいような気持ちになりつつも、こうして思いやってくれる友人がいて幸せだと思った。 諏訪くんは、レンタルスペースまで車を走らせ、荷物を積み込んでくれた。 「あの……ごめんね。こんな高そうな車に、いっぱい荷物積ませちゃって……」 車種はよくわからないけれど、スタイリッシュなブラックの車体は見るからに高級そうだし、左ハンドルに加えて車内のデザインも洗練されている。いわゆるスポーツカータイプらしい車には、どう考えてもこんな大荷物は似合わない。 「そんなこと気にしなくていいよ。それより、香月って車に興味ない?」 「うーん、特には……。自分が運転するなら軽がいいし、そうじゃなくても乗れればなんでもいいかなって。地元と違ってこっちは交通量が多くて怖いし……」 前を向いたままクスッと笑った彼が、「そっか」と相槌を打つ。 その後も他愛のない話をしていると、諏訪くんが重厚な門構えのマンションの地下駐車場に車を停めた。 「あの、諏訪くん……ここが寮なの?」 「うん。荷物は一気に運べないから、あとでまた取りに来よう」 怪訝に思いつつも、彼があまりにも普通に答えたからそれ以上は尋ねられない。
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