Bloom 3 遠くの親類より再会した初恋の人?

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諏訪くんが『使ってないから』と言った残りの二部屋のうちの一室はがらんとしていたけれど、私が使わせてもらうことになった部屋はゲストルームのようだった。 なにはともあれ、彼の生活環境は私の想像を遥かに超えている。昨日は『気兼ねせずにくつろいで』と微笑まれたものの、今はまだちっとも落ち着けそうにない。 ただ、外国のような広いキッチンは使ってみたかった。 (いきなり使わせてもらうのは気が引けるけど、諏訪くんは自由に使っていいって言ってくれたし……。諏訪くん、お言葉に甘えて失礼します) 心の中で頭を下げ、キャビネットを開く。最低限の生活用品がどこにあるのかは昨日のうちに教えてもらっていたから、必要なものはすぐに見つかった。 フライパンや鍋を出し、数本あった包丁のうちの一本を手に取る。どれもとても綺麗で、頻繁に料理をしている感じはなかった。 ところが、食器棚を覗いたときには手が止まってしまった。 並んでいるプレートやマグカップが、ペアのものばかりだったから。お茶碗まで色違いのデザインで、もしかしたら恋人と揃えたのかもしれない……と脳裏に過る。 (そういえば、彼女がいるとは聞いてないけど、さすがに居候させてくれるくらいだから、今はきっといないよね? でも……) どう見ても恋人用の食器が多い食器棚からは、諏訪くんの過去にいた女性の影がちらつく。もちろん、彼みたいな素敵な人に恋人がいない方がおかしいけれど、胸の奥がチクリと痛んだ気がした。
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