Bloom 3 遠くの親類より再会した初恋の人?

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(いや、別に傷ついたわけじゃなくて……。初恋の人の彼女って、ちょっと気になるっていうか……) 誰にするでもない言い訳を心の中で呟いたところで、ハッとして冷静になる。気分を切り替えるように袋からミンチ肉を出し、野菜も並べていった。 今夜のメニューは、メインをおろしハンバーグにして、汁物と副菜を二品ほどつける予定だ。諏訪くんの好みがわからないため、無難なものに決めた。 料理はとても好きで、実家にいるときにはよく母の手伝いをし、母がパートで帰宅が遅くなるときには私が食事当番だった。上京してひとり暮らしを始めてからも自炊をするように心掛け、体調が悪くなる前まではお弁当を持参していた。 食生活だけはきちんとするように、と母から口酸っぱく言われていたから。 おかげで、料理の腕だけはそこそこだと思うし、味は家族と敦子のお墨付きだ。 (これくらいしか特技はないんだけどね) とはいえ、彼に食べてもらうのは緊張する。出来上がる直前になって、口に合わなかったらどうしよう……と不安に駆られてしまった。 「ただいま」 そんな心配をしていると、諏訪くんが帰宅した。玄関の方で物音がしてから彼がリビングに現れるまでは三十秒もなく、私はフライパンを片手に微笑む。 「おかえりなさい」 すると、諏訪くんが静止し、一拍ほどの間が空いたあとで笑みを浮かべた。
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