8010人が本棚に入れています
本棚に追加
「うまい! 香月、このハンバーグめちゃくちゃうまいよ!」
諏訪くんの表情が、まるで少年のように無邪気に綻んでいく。それはお世辞じゃないのは明白で、私は安堵とともに喜びを抱いた。
「この味噌汁も、ちゃんと出汁を取ってるよな? カツオの味がしっかりしてる」
「今日は時間があったから。いつもちゃんとしてるわけじゃないよ?」
「でも、これだけ作るのって時間がかかるだろ」
おろしハンバーグ、タコときゅうりの酢の物、きのこの和風マリネ、ナスと玉ねぎのお味噌汁。ハンバーグの付け合わせは、ブロッコリーと人参のグラッセにした。
確かに、少し時間がかかったけれど、彼に喜んでもらえたのなら作った甲斐がある。
「実は、香月がまだ晩ご飯を食べてなかったら、近所のイタリアンにでも誘うつもりだったんだ。そこ、結構うまくてよく行くんだ」
「そうなの?」
「ああ。でも、香月の料理の方がうまいし、香月の手作りが食べられてラッキーだ」
ふわりと優しい笑みを携え、恥ずかしげもなく話した諏訪くんには、きっと他意はない。それはわかっているからこそ、ドキドキしている場合じゃない。
「そっか。そんな風に言ってもらえてよかった」
必死に平静を装い、なんとか笑顔を返す。彼は喜びを隠さずに箸を進め、綺麗に平らげてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!