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日がすっかり暮れた、二十時過ぎ。
「ただいま~! あー、お腹空いたぁ……」
1LDKのアパートに、高校時代からの親友――赤塚敦子の声が響いた。
「おかえり。晩ご飯できてるよ」
「さすが志乃! ムカつく上司と違って天使に見える!」
「居候させてもらってるんだもん、これくらいしないと」
「それは言わないの!」
彼女はムッとした顔を見せたあと、「晩ご飯はなに?」と笑った。
「今日はチキンカレーです」
「やっぱり! カレーのいい匂いがしてるもんね」
敦子がメイクを落とす間にカレーを温め直して盛りつけ、冷蔵庫に入れておいたサラダを出す。
程なくして、洗面所から戻ってきた彼女とローテーブルを挟んで、「いただきます」と手を合わせた。
肩の力を抜いたように「おいしい」と連呼する敦子に、重苦しかった心が癒される。
「ところで、志乃はどうだった? ハローワークに行ったんでしょ?」
中小企業の経理部で働く彼女は、ひとしきり愚痴を零したあとで話を振ってきた。
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