Bloom 3 遠くの親類より再会した初恋の人?

12/18
前へ
/205ページ
次へ
「あ、でも、諏訪くんはいいの? 恋人とか……」 「今はいないし、そんなこと心配しなくていいよ。しばらくは誰とも付き合う気はないし、香月のせいでどうこうなったりしないから」 またしても、胸がチクリと痛む。モヤモヤとしたものが込み上げてくるのはわかるのに、なにが私にそうさせているのかがわからない。 「じゃあ、あの食器は前に付き合ってた人が選んだの?」 「え?」 きょとんとした彼が、目を瞬かせる。私は無意識に詮索してしまったことに気づいて、慌てて口を開こうとした。 刹那、諏訪くんが噴き出し、それを隠すように右手で口元を覆うようにした。明らかに笑いを噛みしめている彼に、いたたまれなくなる。 「そんなこと気にしてたんだ」 「だ、だって……」 「あれはそういうのじゃないから」 「でも、ペアの食器なんて――」 「うん、引き出物の定番だよな」 にこにこと微笑む諏訪くんが、私をじっと見つめてくる。次の瞬間、意味を理解した私の頬が、ボッと音を立てたように熱くなった。 「……っ、そうなんだ! 引き出物だったんだね!」 必死に明るく振る舞っても、どんどん墓穴を掘っていく気がしてならない。余裕を纏う彼が目を眇め、おかしそうにクスッと笑った。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8012人が本棚に入れています
本棚に追加