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もっとも、彼に迷惑をかけ続けるわけにはいかないため、一刻も早く引っ越し先を探さなければいけないのだけれど……。仕事に慣れるまでは一緒に住むという約束をしたから、すぐに家を探すこともできない。
目星くらいはつけておくつもりではあるものの、諏訪くんの言う『仕事に慣れるまで』がどの程度かわからない以上、あまり早くから動くのも憚られた。
そんなことを考えていると、ピザが運ばれてきた。焼きたて特有の香ばしさとトマトの酸味が混じった匂いが、空腹中枢を刺激した。
ふたりで「いただきます」と声を揃え、お腹が鳴る前にピザを頬張る。
もっちりとした生地にオリジナルのピザソースとバジル、そして新鮮なトマトとたっぷりのチーズが絶妙に絡み合い、あまりのおいしさに感嘆の声が漏れた。
「おいしい……! なにこれ⁉ 今まで食べたマルゲリータの中で一番かも!」
目を丸くする私に、諏訪くんが唇の端を吊り上げる。
「だろ? ここのマルゲリータ、本当にうまいんだよ。ときどきテイクアウトもするんだけど、やっぱり店内で焼き立てを食べるのが最高なんだよな」
嬉しそうな彼に、相槌を打つ。もう一口かじりつくと、柔らかな笑みを向けられた。
「香月も気に入ってくれて嬉しいよ」
「素敵なお店を教えてくれてありがとう。またすぐにでも食べに来たいくらいだよ」
「うちからなら近いし、いつでも来られるよ」
「うん、歩いて五分くらいだったもんね。今度は敦子を誘って来ようかな」
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