Bloom 4 ぬるま湯に浸かりすぎないように

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きっと、敦子も気に入るだろう。そんな想像をしてふふっと笑い、近いうちに彼女を誘おうと決めると、諏訪くんが苦笑を零した。 その表情の意味がわからなくて、アイスレモンティーを飲んだあとで小首を傾げた。 「どうかした?」 「さっきのは香月を誘ったんだけど」 「え?」 「もちろん赤塚とも来ればいいけど、俺とまた一緒に来ようって意味だったんだよ」 頬杖をついて見つめてくる彼のストレートな物言いに、うっかりたじろいでしまう。他意はないとわかっている。ただの同居人への配慮に違いない。 そんな思考とは裏腹に、諏訪くんの真っ直ぐな視線に深読みしそうになった。 「そうだね。また休みの日に来れたらいいな」 平静を装って頷けば、彼が瞳を緩めた。 友人とご飯を食べに行こう、というだけのこと。 それなのに、諏訪くんが妙に嬉しそうに見えてしまうのは、私が男性に慣れていないせいだろうか。慣れていないどころか、彼以外の男性は苦手だけれど。 「そういえば、うちでの生活は慣れた?」 「うん。諏訪くんのおかげですごく快適だよ」 素敵なマンションには相変わらず気後れしているものの、洗練されたシステムキッチンで料理をするのは楽しいし、広いバスルームはリラックスできる。バルコニーで飲むコーヒーはおいしく、家財付きの部屋には不満なんて出てこない。 ホテル暮らしのような生活は快適すぎるくらいで、レビューをつける機会があるのなら星が十個でも足りないくらいだ。
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