Bloom 4 ぬるま湯に浸かりすぎないように

5/13
前へ
/205ページ
次へ
「だいたい、自炊はほとんどしない男のひとり暮らしの食生活なんて、結構ひどいものなんだからな。毎日、コンビニかカップラーメンか、たまにテイクアウトだし」 「外で食べないの?」 「付き合いで行くことはあっても、ひとりで外食しようってあんまり思わないんだ。それなら家でゆっくりしたいかな」 この一週間、諏訪くんは忙しそうだった。 帰宅時間はそこまで遅くないけれど、食事やお風呂を済ませたあとにも仕事をしていたし、土日も数時間は書斎にこもっている。そんな仕事中心の彼の生活では、食事にまで気が回らないのかもしれない。 「だから、香月がいてくれてすごく助かってる。俺にもメリットがあるっていうかさ」 それもきっと、諏訪くんの本音に違いない。けれど、彼はそれ以上に私を思いやってくれているんだろう。 ただの同級生にここまでしてくれる諏訪くんは、本当に優しい人だ。昔から変わらない性格に、思わず笑みが零れた。 「ありがとう。諏訪くんって、本当に優しくていい人だね」 「そうでもないけどね」 自嘲混じりに微笑んで肩を竦めた彼に、ふふっと笑ってしまう。 「謙遜することないよ。諏訪くんがいい人じゃないなら、いい人なんていないんじゃないかな」 「本当にわかってないな」 「え?」 「いや、こっちの話。香月は変わらないなと思ってさ」 ふと独り言のようごちた諏訪くんが、眉を寄せて瞳をたわませる。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8019人が本棚に入れています
本棚に追加