Bloom 4 ぬるま湯に浸かりすぎないように

7/13
前へ
/205ページ
次へ
* * * 週明けから四日後の木曜日。 今日から七月に入り、私は諏訪くんがCEOを務める『株式会社(かぶしきがいしゃ)SU INNOVATION(エスユーイノベーション)』の社員としての初日を迎えた。 「香月志乃です。ご迷惑をおかけするかと思いますが、よろしくお願いいたします」 彼の紹介とはいえ、今までとはまったく違う職種になるため、昨夜からずっと緊張していたけれど。 「副社長の鵜崎(うざき)です。わからないことがあれば、なんでも訊いてね」 温かく迎え入れてくれた鵜崎副社長を始め、スタッフは歓迎してくれた。 エスユーイノベーションは港区にある十階建てのビルの三階にオフィスを構え、二十人ほどの社員と数人のアルバイトが在籍している。 私が入ったことで、男女比率はちょうど半々になるのだとか。男性ばかりに囲まれるような環境じゃないことに、まずは胸を撫で下ろした。 「香月さんには、木野(きの)さんがついてくれることになってるから。まずは木野さんから指示をもらって仕事の流れを覚えて」 諏訪くんに〝香月さん〟と呼ばれるのは、なんだかむずがゆい。 「木野です、よろしくね。わからないことがあればなんでも訊いて」 差し出された右手に、右手で応える。握手をしながら「よろしくお願いします」と頭を下げれば、木野さんはショートカットの髪を耳にかけて微笑んだ。 約束通り、女性を指導係にしてくれたのは嬉しい。けれど、てっきり彼が中心になって仕事を教えてくれるのかと思っていたから、少しだけ心細かった。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8021人が本棚に入れています
本棚に追加