Bloom 4 ぬるま湯に浸かりすぎないように

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「まずは社内を案内するね。って言っても、迷うような場所もないんだけど」 木野さんはそう言いつつも、丁寧に説明しながら社内を案内してくれた。 エスユーイノベーションが借りている三階フロアには、大小様々な部屋が六室あった。重役室、応接室、ミーティングルーム、休憩室、資料室兼備品倉庫、そして一番大きな部屋に全社員のデスクが配置されていた。 「重役室は社長と副社長、秘書の篠原(しのはら)レイラさんの三人で使ってるの。あ、篠原さんは副社長の隣にいた美人ね」 まだ全員の顔は把握できていないけれど、確かにさっき鵜崎副社長の隣にはひときわ目立つ美女が立っていたのを覚えている。 くっきりとした二重瞼のアーモンドアイが印象強く、どこかエキゾチックな顔立ちだった。艶やかな栗色の髪は綺麗に纏められ、スーツ姿からは色気が滲み出ていた。 端正な諏訪くんに負けず劣らず美形の副社長と並んでも、ちっとも引けを取らない容姿だったし、三人が並んでいるところはある種の迫力があった。 「篠原さん、ハーフなんですって。年齢は二十九だったかな? うちは社長と副社長が立ち上げたんだけど、ふたりの次に古株なのが彼女なのよ」 「そうなんですね。じゃあ、篠原さんもSEの経験があるんですか?」 エスユーイノベーションは、アプリ開発がメインの会社だと聞いている。社員が増えた今は、企業のシステム管理やホームページの作成なども請け負っているようだけれど、社員の大半がシステムエンジニアなんだとか。
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