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十八時に上がらせてもらった私は、帰宅してすぐに夕食の支度に取りかかった。
今日は定時で退社できたけれど、忙しいときにはもっと遅くなるだろうし、作り置きをしておくことも視野に入れよう。なんて考えつつ夕食を完成させた頃、リビングのドアが開いた。
「ただいま」
「おかえりなさい。ご飯できたところだよ」
今夜は肉じゃがをメインに、副菜にはほうれん草の白和えとだし巻き卵、汁物は大根の味噌汁といった和風メニューだ。ロメインレタスを使ったサラダもある。
「肉じゃがだ。今日は和食の気分だったから嬉しいよ」
頬を綻ばせる彼を見て、和食にしてよかったと思う。
夕食を食べ始めると、諏訪くんは相変わらず大袈裟なくらい褒めてくれた。
「ところで初日はどうだった?」
「今日は流れを見せてもらっただけだし、まだなんとも言えないけど、木野さんが丁寧に教えてくれるから大丈夫だと思う。緊張もすぐに解れたし」
「よかった。スタッフは信頼できる人ばかりだけど、香月の言葉を聞いて安心した」
「心配してくれてありがとう」
「いや、それより社内の案内もできなくてごめん」
眉を下げた彼が、お箸を置いて息を吐いた。
「本当は俺がするつもりだったんだけど、タケと篠原に反対されたんだ。あ、タケって鵜崎のことなんだけど、あいつの名前は武則っていうんだ」
諏訪くんの呼び方からして、ふたりは社長と副社長という関係性でありながら友人でもあるんだろう。
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