Bloom 5 花は折りたし梢は高し……でもないかも?

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諏訪くんを相手に疑念はない。 ただの友人というだけで、仕事と住居のお世話をしてくれ、日々気遣ってくれる。そんな彼だからこそ、私には疑う方が難しい。 「諏訪くんのことだから、私を心配してくれてるんだよね? それはちゃんとわかるよ。でも、手を繋ぐって……」 「怖い? それとも、俺と手を繋ぐのが嫌?」 黙り込んで考え、嫌じゃない……と思う。「ううん」と答えれば、諏訪くんが瞳を優しく緩めた。 「じゃあ、ちょっとだけ触れてみようか」 「ちょっとって……?」 「そうだな……。小指だけならどう?」 自分の顔の前に右の手のひらを持ってきて、小指を見つめる。 一番小さくて細い指なら、触れる面積もその分少ない。それがわかると、これくらいなら……と思えた。 「うん、それならたぶん……」 続ける予定だった『大丈夫』は声にできなかったけれど、彼は察したようだった。 「まずは軽く絡めるだけだから」 諏訪くんが小さく頷き、左手の小指だけを出してくる。緊張する私に、彼は「香月のタイミングでいいよ」と穏やかに告げた。 ただ、そこに甘えてしまうと時間がかかりそうで、えいっ! と言わんばかりの勢いで右手の小指で骨張った小指を捕まえにいった。 瞬間、目を丸くした諏訪くんが数瞬して眉を下げた。なにかまずかったかな……と不安を抱いた私に、なんとも言えない微笑が向けられる。
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