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六月も今日でちょうど半分が終わる、中旬の火曜日。
スマホに届いたメッセージを見て、大きなため息をついた。
ハローワークで紹介された三社は不採用となり、さらに自分で探した企業も数社受けた。ところが、すべて不採用通知をもらってしまったのだ。
これでまた振り出しに戻った。
敦子の部屋にいられるのは最長でもあと半月しかないのに、職探しが難航していて住居の目途も立っていない状態だ。
(就職先によって家を決めた方がいいと思ってたけど、もう先に家を決めるべき? でも、通勤時間や交通手段も考えたら……)
彼女には家賃の半額を渡し、生活費も折半しているけれど……。心配と迷惑をかけてばかりで、なにひとついい報告ができないことが歯がゆいし申し訳ない。
「ただいまー!」
「あ、おかえり」
「志乃、二十七歳の誕生日おめでとう!」
「あ、そっか。私、誕生日だったね」
「なんだ、忘れてたの? 朝もおめでとうって言ったのに」
帰宅したばかりの敦子が、ケーキの箱を差し出しながら苦笑を零す。
「忘れてたわけじゃないんだけど、ちょうど今、不採用通知が届いて……」
「そっか。きっと、その会社も見る目がなかったんだよ! 志乃みたいに優しくて気が利いて努力家の子なんて滅多にいないのに、採用しないなんて損したね」
彼女は明るく笑うと、「それより食べようよ!」と袋から出したものをテーブルに並べていった。
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