Bloom 5 花は折りたし梢は高し……でもないかも?

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「じゃあ……失礼します……」 右手の人差し指で、大きな手のひらにちょんちょん……と触れてみる。これは驚くほど平気で、すぐに指で肌を撫でるようにしてみた。 「……っ。香月、それはちょっとくすぐったい」 「あ、ごめんね」 「いや、香月が平気そうだからいいけどさ」 肩を竦めるようにしつつも、諏訪くんの面持ちは穏やかだ。彼の優しい瞳が、私に安堵感を与えてくれる。 「もうちょっといけそうなら、一本ずつ指を増やして握ってみる?」 「う、うん」 手の向きを変えるためか、諏訪くんが胸元辺りまで持ち上げた手のひらをこちらに向け、どうぞと言わんばかりに微笑んだ。 小さくハイタッチするように大きな手のひらに五指の先を触れ合わせ、そこからゆっくりと上を目指す。不安はないのに、なんだか緊張してしまう。 理由のわからないドキドキ感を隠すように深呼吸をして、彼の指の間を埋めるように自分の指を滑らせていく。 一呼吸置いてわずかに力を込めれば、一拍して諏訪くんも指を曲げ、お互いの手を軽く握り合うような形になる。 「どう?」 控えめにかけられた声に、おずおずと頷く。 「……平気だと思う」 やっぱり、諏訪くんが相手だと、不安も嫌悪感も生まれない。 彼の肌に触れていることや、体温を感じていることにドキドキしても、それはあくまで不可抗力。男性に慣れていない……という私の経験値の低さがもたらすもの。
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