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Bloom 6 堰かれて募る恋の情……なんて言うけれど
満面の笑みで顔を突き合わせた敦子と、「久しぶり!」と声が重なる。そのことにまた笑顔が零れ、彼女とならではの雰囲気に心が和んだ。
お互いの最寄り駅の中間地点で待ち合わせた私たちは、ワッフルが人気のカフェに入った。カフェオレとワッフルをふたつずつ注文すると、軽くお互いの近況報告をしながら運ばれてくるのを待つ。
敦子は、今の生活が落ち着いてきたようだ。入籍は十二月に決まり、今は式場巡りに精を出しているのだとか。幸せそうな彼女に、私まで嬉しくなった。
「志乃は諏訪くんとの生活はどう? 仕事は少しずつ慣れたみたいだけど」
定期的に連絡を取り合っている敦子は、諏訪くんとの同居が決まったときに泣きついた私を心配しているようで、いつも気にかけてくれる。私は本当に友人に恵まれた。
「快適に過ごせてるよ。男性と同居なんてどうなるかなって心配だったけど、諏訪くんが本当に優しいから助かってる」
感謝しかないよ、と微笑めば、敦子が「そっか」と瞳を緩める。
「で?」
「え? なにが?」
「まさかそれだけ?」
「それだけって?」
「男女がふたりで一緒に住んでるんだから、他にもなにかあるでしょ」
彼女の言いたいことを察せなかった私に、痺れを切らしたような苦笑が向けられる。
「もしかして恋愛的なことを言ってる?」
「だって、相手は諏訪くんよ? 志乃の学生時代の唯一の男友達で、昔も今もただひとり普通に話せる異性で、なにより初恋の相手だよ?」
力説した敦子に「期待もするよ」と付け足されて、今度は私の方が苦笑いした。
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