Bloom 6 堰かれて募る恋の情……なんて言うけれど

4/15
前へ
/205ページ
次へ
「……諏訪くんがそれ聞いたら泣くんじゃない」 彼女の言葉に小首を傾げる。 いくら優しい諏訪くんだって、さすがに泣くほど喜んだりはしないだろう。ただ、泣かなくても彼が喜んでくれるのは確かなはず。 「そこまで喜ぶってことはないだろうけど、お祝いとかしてくれそうだなぁ」 そう考えて苦笑が漏れる。 諏訪くんのことだ。私が遠慮しても、彼はきっとお祝いをしてくれるだろう。 「諏訪くんって意外と気が長いんだね」 「そうかも。会社でも家でも、怒ってるところは見たことがないし」 大きく頷けば、敦子が肩を竦めるようにして苦笑いで「そうだね」と相槌を打ったけれど。なんとなく、彼女の態度に含みがあった気がする。 「それよりさ、諏訪くんに喜んでほしいなら、自分からも触れてみれば?」 ところが、そこに意識を割くよりも早く突飛な提案が寄越され、目を丸くした。 「諏訪くんを見つめながら、ちょっと頬に手を添えてみるとか。ほら、リハビリの成果が出てるってわかれば、諏訪くんだって協力してる甲斐があるって思うんじゃない?」 敦子の話は予想外のことではあるものの、一理あると思えたのも事実。 私から触れるのは不安だった。ただ、相手が諏訪くんなら頑張れる気もする。 「もちろん無理する必要はないけど、諏訪くんは喜ぶと思うよ」 「うん……。できそうならやってみる」 彼女の提案を実行してみようと考えたのは、彼に成果が出ていることを身を持って伝えたかったから。だいたい、これくらいできなければ先が思いやられる。 ワッフルを食べ終える頃には、私の意志は固まっていた。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8030人が本棚に入れています
本棚に追加