Bloom 6 堰かれて募る恋の情……なんて言うけれど

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夕方、家に帰ると諏訪くんが出迎えてくれた。 彼は私と同時に家を出て、近所のジムに行っていた。体力作りが主な目的らしいけれど、しっかりと鍛えられている体を見ればそれだけじゃない気がする。 「俺、先に風呂入ったんだけど、夜ご飯はデリバリーでも頼まない? 香月、いつも作ってくれるから、たまにはラクしようよ。ピザか寿司ならどっちがいい?」 諏訪くんの中では、夕食をデリバリーにするのはもう決定事項のようだ。 「諏訪くんは?」 「俺は今日は寿司の気分。実は、駅前の寿司屋を通ったら急に食べたくなって」 「私もお寿司がいいな」 「じゃあ、決まり。適当に頼んでおくから、届くまでに風呂に入っておいでよ」 その言葉に甘えて、部屋に行ってからバスルームに向かう。 最初は落ち着かなかった広いバスルームは、バスタブでゆったりと足を伸ばせるのが嬉しく、今ではリラックスできる場所のひとつだ。ただ、今日は敦子の提案を決行しようとしているからか、なんだか落ち着かない。 彼のシャンプーの残り香が追い打ちをかけるようで、芽生えた緊張をごまかすように膝を抱え、弱腰になりそうな自身を叱責した。 諏訪くんを待たせないようにお風呂から上がれば、お寿司はまだ届いていないようだった。「早かったな」と笑った彼に、曖昧な笑みを返す。
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