Bloom 6 堰かれて募る恋の情……なんて言うけれど

8/15
前へ
/205ページ
次へ
「えっと……香月……。これはどう捉えればいい?」 動揺しているのは私だけじゃないようで、ようやく口を開いた諏訪くんもまた、困惑をあらわにした。私の意図を図りかねたらしい彼が、どこか気まずそうに微笑む。 「あの……敦子がね……」 思わず言い訳を引っ張り、経緯を話した。 もちろん、最終的に決めたのは私だけれど。ただ、まずはそこから話さないことには、上手く説明できそうになかったから。 「……つまり赤塚が提案されたからこんなことした、ってことでいいんだよな?」 「う、うん……。でも、こうするって決めたのは私だよ? 諏訪くんに練習の成果があるって伝えたくて、〝百聞は一見に如かず〟かなって」 すると、諏訪くんは息を大きく吐き、「そうだよなぁ」と複雑そうに眉を寄せた。 「香月、練習の成果が出てるのはわかったから、とりあえず離れようか。で、今日の練習はもう終わろう」 「え?」 なにかまずかったのかもしれない、と不安が過る。けれど、彼がすかさず微笑んだ。 「香月はなにも悪くないよ。でも……今日はもう充分かなって」 さっき、諏訪くんは『こんなこと』と言った。捉え方によってはマイナスに受け取れる表現は、いたずらに私の不安を大きくする。 「えっと、ごめんね……。急に変なことして……」 「謝らなくていい。香月はなにも悪いことしてないんだから」 「でも……」 優しかった彼の瞳に、わずかに厳しさが宿る。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8034人が本棚に入れています
本棚に追加