Bloom 6 堰かれて募る恋の情……なんて言うけれど

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無条件に与えられてばかりの優しさに、申し訳なさと喜びが押し寄せてくる。後者が勝るのはあっという間で、鼻の奥がツンと痛み、喉がグッと苦しくなった。 同時に、胸の奥に広がっていった熱がなにを意味するかを自覚してしまった。 諏訪くんとの再会を嬉しく思ったのも、男性が苦手な私が彼に対して一度も不安を感じたことがないのも。 最初からずっと諏訪くんだけは平気だったことも、彼に触れられると嫌悪感を抱くどころかドキドキしてしまうのも。 全部、全部……諏訪くんのことが好きだからだ――と。 高校を卒業するときに思い出として置いてきたはずの淡い初恋は、ただずっと私の胸の奥底で静かに眠り続けていただけ。 今ようやくして、彼への恋情は再び息づいていたのだと思い知る。 記憶をたどれば思い当たることが多すぎて、なぜ今まで気づかなかったのか……とおかしくなったくらいだ。 あれだけ優しくされて意識しない方が変だったのかもしれないけれど、なんて単純で簡単な人間なんだろう。その上、自分の気持ちにも鈍いなんて……。 「香月? ごめん、厳しいこと言っちゃったな」 「ううん! 諏訪くんは私のために言ってくれたんだもん! むしろありがたいし、感謝しかないよ。ありがとう」
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