Bloom 6 堰かれて募る恋の情……なんて言うけれど

12/15
前へ
/205ページ
次へ
* * * 駆け抜けていった八月も終わり、九月も中旬を迎えた頃。 木野さんについてもらわなくてもできることが増え、仕事に慣れた実感や成長している手応えを少しずつ得られるようになった。 諏訪くんへの気持ちを持て余しながらも、毎日必死に業務をこなしている。一刻も早く仕事に慣れて、彼の家を出ていけるようにしたいからだ。 このままずっと一緒にいたい……と思うこともある。少しでも長く今の生活を続けられる方法を探したこともあった。 諏訪くんへの想いは実るはずがないからこそ、今だけは現状を言い訳にすれば彼の傍にいられるかもしれないと考えて、もう少しこの生活を維持していたい……と。 けれど、それはあまりにもずるい。 見返りを求めずに優しくしてくれる諏訪くんに対して不誠実だし、いくら失恋が確定しているからといっても、好きな人にそんなことをしたくない。 彼が無償の思いやりを与えてくれた分、せめて私は仕事を含めて自分自身を成長させなければいけないし、その上で胸を張ってお礼がしたい。 だから、甘えてずるいことを考えてしまった自身を叱責し、諏訪くんの友人として恥ずかしくない私でいたいと思ったのだ――。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8034人が本棚に入れています
本棚に追加