保証人システムは日本だけ

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保証人システムは日本だけ

アパート探しにそれほど困っていた訳では無い。 貯蓄は少ないが、別に逼迫していた訳じゃ無い。 適当に会社から30分程度の県内で、手ごろな所を選んだ。 スムーズに事は進み、契約まであと数歩のところまで来ている。 「それではこちらの契約書に身元保証人の署名捺印をしていただいたら、当店までお持ちいただけますか」 仲介業者は、いつものセリフを言っただけなのだろうが、信子にはドキっとするセリフだった。 そういえば誰に保証人になってもらおう。 以前は父に郵送してサインしてもらった。 「保証人って絶対必要・・・ですよね?」 「保証人になられるお方がおられないのですか?」 なんだろう、孤独なんて平気な筈なのに正面から聞かれると なんか恥ずかしい。 「いや・・・そのいますよ。いるんですけどちょっと・・・」 「保証人様の署名が難しいのであれば保証会社を利用されますか」 「保証会社?」 「ええ、保証会社に連帯保証人になっていただく制度がございますが」 「お金かかりますよね?」 「はい、当店がお願いをしている保証会社ですと家賃の80%が費用となります、あと年間更新料が1万円かかります」※相場は50~100%。 数万円の上積み、信子にとっては痛い出費。 実家暮らしの時に貯蓄出来たかといえば全く出来ていない。 酒代が高い!最近は毎日飲酒しているし、つまみも買う、何より 「家賃が無い分、好きに使える」という気持ちが逆に財布の紐を 緩ませていた。 それにもう実家は無いし頼れる人もいない。 少ない収入と少ない貯蓄を頼りに一生を生きていかなければならない。 「んーーーーー・・・・・・・・」 信子は深く唸った後 「いや、サインしてもらってきます」 と契約書を鞄に押し込んで店を出た。 翌日のオフィス、信子は引き続き唸っている。 「んーーー・・・」 やっぱり保証会社しかないか・・・と諦めかけた時。 鈴木悦男が信子の前をよぎる。 悦男は信子に気が合って、以前はアプローチしていたが信子の態度のあっけなさと冷淡さにすっかりたじろいでしまって声を掛けれずにいた。 「あ、鈴木さん!」 少し高めの声で信子は悦男を呼び止めた。 「え、え?あ、はい」 悦男は信子から声を掛けられるとは思っておらずまともに返答が出来ない。 「最近、あまり話してなかったですね」 「そ、そうですね」 「以前はお世話になりました。ちゃんとお礼も出来ていないままで申し訳ありません」 「いや、い、いいですよ」 最近明らかに冷たかったのに、笑顔で話しかけてくる信子に悦男は戸惑うしかない。 「あの、お礼がしたいので今日、仕事終わってからご飯でも行きません?」 「え・・・え?えーーー⁉」 悦男は急展開についていけない。 それでも嬉しい気持ちは膨れ上がっていた。
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