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アルコール依存症かな
病室のベッドで目が覚める。
見渡すと他にもベッドが3台、4人部屋らしい。
ナースコールを押すと看護師がやってきて医師の元まで
案内してくれた。
人当たりの良さそうなその医師は、見かけ通り穏やかな口調で
話し出した。
「気分はどうですか」
「はい、大丈夫です。すいませんご迷惑をお掛けしました」
「いえいえ」
「では何ともないので、失礼しようと思うのですが」
「待って下さい。ちゃんと症状と向き合った方がいいと思いますよ」
「え、私病気なんですか⁉何か見つかったのでしょうか」
「佐々木さん、貴方はアルコール依存症ですね。それもかなり重度の」
「アルコール依存症?私が?いえいえそれは無いでしょう」
「佐々木さん、貴方がこちらに搬送されて来た時かなりのアルコール度数が検知されました。出勤されている途中だったのですよね?それでこのアルコール度数はかなり高めです」
「確かに今日は飲み過ぎましたが、普段はもう少し控えているんです。それだけでアルコール依存症だなんて」
「もちろんそれだけではありません。佐々木さん、貴方は何時間寝ていたと思いますか」
「えっと2時間くらいじゃないですか」
「26時間です」
「えっっ!嘘だ!!いや、日付が一日経っている、そんな」
「自身の格好も病院着になっているのに違和感を感じませんでしたか。貴方は眠っている間、尿を出しても看護師が呼びかけても全く反応せず眠り続けていました。相当疲労が溜まっていたんでしょう。常時アルコールが体内にある状態だと睡眠をとっているつもりが、ただ気を失っているだけの状態になり人体が回復しないのです。ただ眠気だけが回復しアルコールによって気分は高揚する。体調が良いと勘違いして、そのサイクルを繰り返し、溜まりにたまった疲労が生命にまで影響しだしたところで、体が悲鳴をあげて強制ストップがかかったのです」
医師に説明していない筈の生活サイクルをばっちり当てられてしまい、反論材料が見つからない。
「失礼ですが・・・」
医師は続ける。
「佐々木さんは独り暮らしではないですか」
「仕事中も隠れて酒を飲んだことはないですか」
「最近、食事より飲酒を優先していませんか」
占い師か、と思うほど医師は信子の生活を見抜いてくる。
「何より・・・」
「『自分はアルコール依存症ではない』というセリフが一番アルコール依存症の人が言う事なんですよ」
完全ノックアウト。信子の完封負け。認めるしかなかった。
「分かりました・・・認めます」
サスペンスドラマの犯人みたいだった。
「そうか、だから最近体調の変化が起こっていたのですね。あの日も、もう3か月来てないし」
「・・・え?えーーーーー!?」
今まで淡々と話していた医師が取り乱して声を上げた。
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