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本当はすぐにでも動きたい。
蛍一の中は初めて迎える昂りで押し広げられはしたもののかなり狭く、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる。
早く動いて思う様中を擦りたい。
けれど短い息を繰り返してひたすら耐えている蛍一を思うと、無闇に動くことも出来ない。すると、蛍一はオレの頬に手をあてて言った。
「動いて・・・ください・・・」
吐息とともに吐き出される言葉にオレの身体は刺激され、中のものがさらに昂る。
「ぼ・・・くは・・・だい・・・じょうぶ・・・です」
喘ぎを抑えて懸命にそう言う蛍一がいじらしく、オレはそのおでこにキスをすると、腰を動かし始めた。
互いの腹の間の蛍一の昂りも萎えることなく上を向いている。
ちゃんと感じている。
それを確認して、オレは強弱をつけて蛍一を突いていく。けれどおそらく無意識なのだろうが、蛍一の中はオレを逃がさんとばかりに絡みつき、蠢き、締め付ける。その気持ち良さに我を忘れそうになるのをグッと堪え、蛍一が苦しくないように動く。
忍耐力を試されているようだ・・・。
それでも少し暴走しかかっていたのか、途中蛍一が極まったのに止まってあげることが出来ず、そのまま腰を動かし、間髪入れずに蛍一を再び追い上げ、そして・・・。
「ああっ・・・んっ」
蛍一が一際高く啼き、オレは彼の奥深くで果てた。
身体を震わせ快感に耐える蛍一から自身を引き抜き、蛍一の身体を拭いてやる。そしてそのままオレは蛍一の横に転がった。
これがもっと気心の知れた相手なら抱きしめるところだが、今日会ったばかりの相手にはどうすればいいのか。そう思っていたら、蛍一の方から身を寄せてきた。
ぴったりと身体をくっつけてくる蛍一を抱きしめてやると、蛍一は顔をオレの胸に擦り付ける。
「あの・・・大丈夫でした?僕は・・・良かったですか?」
これも無意識なのだろう。
目を伏せて頬を赤らめて聞いてくる様はオレを煽っているとしか思えない。
耐えろ、オレ。
初めての相手にがっついて二回もしてはいけない。
どうにか自分の中の衝動を抑え、オレは笑顔で蛍一の頭を撫でた。
「とてもよかったよ。蛍一はどう?辛くなかった?」
「大丈夫です。あの・・・なら・・・」
蛍一は視線を上げて縋るようにオレを見る。
「出しても構わないよ、婚姻届」
そのオレの言葉に蛍一は安心したようにふわりと笑う。そんな蛍一の頭をさらに撫でながら思う。この蛍もまた、何かを諦めようとしているのではないかと。
蛍は長年の片思いに見切りをつけてオレに子種をねだった。蛍一もまた、なにかに見切りをつけて新しい人生・・・結婚をしようとしているのではないか。
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