ほたるのうんめい

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医師からの説明によると、運命の番とは互いのフェロモンを嗅ぐと発情してしまい、どんな強い抑制剤も効かなくなる。それは交わる行為を行うか、フェロモンが全く感じなくなるまで続くのだという。そしてその発情は番になるまで続き、たとえその場を逃れたとしても、フェロモンを感じる度に互いに発情してしまうのだという。 と言うと、もし出会ってしまったなら番になるしかないと言うことだろうか? 「その説明の後、本当に運命の番なのか試すことになりました。医師立ち会いの元、僕のいる隔離部屋に彼が来たんです。でも入ってくる前、ドアを開けた瞬間に互いのフェロモンで僕達は発情し、すぐさまドアは閉められました」 運命の番自体、まだその存在があまり公に知られていないため研究が進んでいない。ただ分かっていることは、二人が番わない限り発情は起こり続けるし、どんな抑制剤も効かずアフターピルも効かない。 「僕はうれしかったんです。ずっと探していた運命の番に会えて。運命の番と聞かされる前から、僕の中はその人のことでいっぱいになって、苦しいくらいでした。それが運命の番だと知って・・・」 蛍一は当然このまま二人は結ばれると思っていた。いるかいないかも分からなかった運命の番の存在。それがいると分かり。なおかつ出会うことが出来たのだ。 けれどその後退院すると、その相手からは一切連絡が来なかった。 「なぜ連絡が来ないのだろう。そう思いながら彼が好きすぎて苦しくて堪らなかった。だから僕から連絡を入れたんです」 取引先の、しかも代理とはいえ一度は担当になった相手だ。当然彼の名刺を持っていた。 けれどこの番号は会社の携帯であって、本人のではない。それが分かっていても、蛍一はかけずにはいられなかった。 しかし電話に出た彼から、思いもよらないことを告げられる。 『オレにはもうすぐ結婚する恋人がいる。オレが愛しているのはその人であなたじゃない』 そう一方的にまくし立てられて切られた電話。 そんな仕打ちをされても運命というのは残酷なもので、分かっていても思いは消えず、会いたい、触れたい、交わりたいという思いに頭が支配されていく。 けれど蛍一も分かっている。そんなことを思っても一度は拒絶された身、会いに行くことは出来ないと。 会ってしまったら、いや、フェロモンが届く距離まで近づいてしまったら二人は発情してしまうのだ。相手が自分を愛していなくても。それでも蛍一は構わなかったが、彼の恋人のことを考えると出来なかった。
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