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しかし本当にこんな純粋で無垢な存在を、こんなオレがもらっていいものなのだろうか・・・。
しかもバツイチだし・・・。
これまでの交友関係で恥じることは何一つないと自信を持って言えるが、せめて戸籍だけでもキレイなままでありたかった。
そんな事を考えながらキレイな寝顔を見ていると、目が僅かに開いた。と、思ったらぱっと開いて焦ったように目を左右に動かしている。
寝ぼけてるのかな?
と思ったらいきなり目が合った。
「ごめんなさい」
開口一番のその言葉に、やっぱり寝ぼけてるのかと思ったが、蛍一は焦ったように起き上がってベッドを降りようとする。
「やっぱりオレじゃダメだったのか?」
ひと眠りして冷静になったらやっぱり嫌だった、と言うことはよくあることだ。
確かに、がっつきすぎてしまった。いい年して我を忘れて夢中になって抱くなど、蛍一じゃなくても願い下げだろう。
しかし、蛍一への思いもそう簡単に消せるほど軽くはない。
ここで諦めたくない。
オレは蛍一を引き留めようとその腕を掴もうとした瞬間、蛍一はオレの方へ向き直った。
「違います」
蛍一はオレの方を向いて正座すると、しゅんとなって目を伏せた。
「僕・・・寝てしまって・・・。ごめんなさい。せっかく誠也さんが僕のためにしてくれてるのに、僕寝ちゃうなんて・・・」
蛍一はまだ裸のままだ。その裸のまま正座して両手を腿の上で握って、申し訳なさそうに下を向くその姿。しかも、そんなことで謝るなんて・・・。
絶対に無自覚なのだろうけど・・・。
ああ、オレはなんて汚い大人なんだ。そんな姿にまた欲情してしまう。
自己嫌悪と反省で何も言えずにいると、蛍一はさらに落ち込んでしまった。
「ごめんなさい」
もう一度そう言うと、その身を前に倒した。
え?
土下座?
しかも裸で・・・。
その姿に一瞬驚いて見とれてしまったが、いや、そんな場合ではない。
「違う違う。蛍一は何も悪くない。君が疲れて寝てしまうほど激しくしたのはオレだし、気持ちよすぎて気を失ってしまったのなら、その方がオレはうれしい」
オレは蛍一の身体を起こすとまた布団に入れて抱き締めた。
「こんなにキレイで純粋な蛍一に、オレなんかでいいのかと思ってたんだよ」
オレの言葉に蛍一はオレを見る。
「蛍一はキレイなままオレの前に現れてくれたのにオレの方は汚れてしまってるだろ?オレは君に相応しくないんじゃないかと思ってたんだ」
だけど、そう簡単に離す気はないけどね。
「・・・誠也さんは汚れてませんよ?」
「いや、既にバツイチだし」
「僕は誠一さんがバツイチで良かったです。前のパートナーさんに感謝してます」
そう言って笑う蛍一はゾッとするほど色っぽい。中身は純粋で無垢なのに、この色気は何なのだろう。
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