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この外見で初めてだったなんてサギだ。
ギャップ萌え?
これも最近流行りのギャップ萌えと言うやつなのか?
そしてそんな蛍一にオレはベタ惚れだ。
オレは反応し始める下肢をグッと堪える。
「誠也さん?」
「いや、すまない。蛍一がかわいすぎて頭が回らなかった。・・・感謝してるって?」
オレの言葉に頬を赤らめならがら、蛍一は小さく頷く。
「前の人と結婚して別れてくれたから、僕は誠也さんに会えたんです。その人と結婚しなくても、別れてなくても、僕は誠也さんに会えなかったんです。だから感謝しています」
確かにオレはもともと違う結婚サイトに登録していた。あのまま結婚していなかったらまだそのサイトにいただろうし、離婚していなかったらもう婚活はしていなかった。
そうか、あの訳の分からない短い結婚生活は、今ここで蛍一に出会うためにあったのか。
「それに、もと運命の番さんにも感謝してます」
その言葉に蛍一を見ると、蛍一は変わらず笑っている。
「あの時彼が婚約者を捨てて僕のところに来ていたら、きっと今頃苦しくて仕方がなかったと思います。僕は自分の幸せのために誰かを犠牲にするなんて嫌です。運命の番と言うだけで、結婚まで考えた相手を泣かすことも、それをしたために苦しむ彼の姿も見たくありません」
蛍一はオレの胸に鼻を埋める。
「あの苦しみも虚無感もあなたに会うために必要だったのなら、僕は喜んで受け入れます。・・・僕、思ったんですけど、僕達がこうして会えたことって奇跡に近いんじゃないかと思うんです。どちらも一度は生涯を共にしようと思った相手と出会っていたのに、紆余曲折を得て、こうして僕達は抱き合っている」
抱き合ってるだけじゃない。オレたちはこの短時間でお互いに惹かれ合い、離れたくないと思うほどお互いを愛している。
「こう言うのも『運命』、て言うんじゃないでしょうか?」
そういう蛍一からオレへの愛情が香りと共に溢れ出している。
ああ、オレからも出ているんだな。
だから蛍一はオレの胸に鼻を擦り付けているんだ。
誰にも渡したくない。
蛍一を抱いた時からずっと湧き上がる独占欲がさらに強まる。
早くこのキレイなうなじを噛みたいが、まだ発情期じゃない。ならば婚姻届をすぐに出しに行こう、そう思った瞬間、蛍一の香りが変わった。
この香りは・・・。
蛍一も気づいたのか、熱い息をゆっくり吐き出した。目元が赤く染っている。
「発情期・・・来週のはずだったのですが、誠也さんへの思いが強すぎて早くなっちゃったみたいです」
小刻みに震え出す身体を押し付けながら、オレの胸を濡れた唇で吸う。
「僕のうなじを噛んで、誠也さんの子種をください」
ちゅっちゅっと胸を小さく吸いながら押し付けた腰を擦り付けて来る蛍一に、オレの理性も弾け飛ぶ。
「そんなに煽って後悔するぞ・・・」
オレは体勢を変えて蛍一を組み敷くと、噛み付くようにキスをした。
この後無事にうなじを噛んで番になったオレたちの元へ、小さな蛍が舞い降りてきてくれるかどうかは神のみぞ知る。
了
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