ほたるのうんめい

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ずっとかわいがっていた子が、ようやく長い片思いを実らせた。 あの子とは縁あって、初めて会った時から23年、ずっとあの子の発情期の相手をしてきた。 元々家庭教師とその教え子。 その二人が身体の関係になったのは一重にオレの若気の至り。いや、なにも知らない無垢で無邪気なあの子に手を出してしまったことは、今でも実は少し罪悪感がある。その罪滅ぼしと言ってはなんだが、あの子の発情期の相手をすることにしたのだ。 というのも、あの子が初めての発情期を迎えた時、たまたま遊びに来ていたアルファの友達が巻き込まれたことがあった。その時は早めに到着したオレが見つけて寸前で止めることが出来たのだけど、もしいつも通りの時間に着いていたら、おそらく二人は最後までことを行っていただろう。 寸でのところで二人を引き剥がして、巻き込まれたアルファくんを家に帰すことに成功したのだけど、完全に発情に飲まれたあの子は抑制剤を飲んでも、それが効いて来るまでかなり苦しむことになった。 そんな辛い状態なのに、あの子は自ら慰めることを拒んだ。 本当なら自分で扱いて出して、後ろにも指を挿れて・・・とそれこそ辛さゆえに無意識に身体が行うはずなのに、あの子はひたすら震えながら泣いて耐えていた。そんな姿が可哀想になって、結局オレは彼の相手をすることにしたのだけど、その時思ったのは、今後の発情期をどうするかだ。 元々オレたちはすでに身体を繋ぐ関係にあったが、それはその場で終わる。けれど、発情期は一週間かかるのだ。本来ならその年齢も考えて抑制剤を服用しながら自ら慰め、その期間を一人で過ごすことになるのだろうけど、この子はきっとそれを拒む。下手したら知り合いのアルファの友達を親のいない間に呼んでしまうかもしれない。 実際、今回もオレが来なかったらそのまま事は進んでいただろう。平常時ならそれでも構わないが、発情期は危険だ。なぜならうなじを噛まれてしまう可能性があるから。実際その時のアルファくんも発情(ラット)を起こしていた。あのままオレが引き離さなければ、うなじを噛んでいた可能性は十分にある。 自分でしてくれれば一番いいのだけど・・・。 それを嫌がるようになったのは、おそらくオレのせいだ。自分でするよりも早く、人にやってもらう気持ちよさを教えてしまったから・・・。 その罪悪感もあり、オレはその日のうちにあの子のご両親にその日の出来事を報告し、このままではかなり危険だと訴えた。だから発情期の間、オレがこの子の相手をし、あの子のうなじを守りたいと申し出たのだ。 もちろんオレたちの関係は言わなかった。今日初めてあの子のために仕方なく関係を持ったと嘘を言った。だけど、そんなことよりも大事な息子のうなじの方が重要だったご両親はその嘘には気づかず、オレの申し出を受け入れてくれた。 こうしてオレたちは晴れて、親公認で発情期を共にすることを許されたのだった。
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