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再び、古い校舎の屋上
*
「さっき、真衣が私に『ここで何をしてるの?』って言ったでしょ?」
真衣は頷く。
「きっと、真衣は責任を感じてるんだろうなって思ってさ。それだけが心残りでさ、でも飛び降りる日を変えることができなくて……もう一度だけ、もう一度だけでいいから真衣と話したかったって思ったら……ここにいたんだよ」
「そんなことって……」
「ね、そんなことあるんだね。私、ユーレイってやつだよ、足もあるけど」
礼奈はスカートの裾を少し持ち上げて白い足を覗かせた。
「足もあるし、真衣が見えて、声も出せるけど……私、死んでるらしいよ?」
「嘘だ!」
叫びながら真衣は礼奈の白い右手を掴んだ。
その手を掴むことはできたが、信じられないほどにその手は冷たかった。恐る恐る真衣が右手を伸ばし、礼奈の頬に触れると、やはり冷たく、雪の帰り道でもここまで冷たくなることはないだろうと思うほどに冷たかった。
「ごめんね」
礼奈が微笑みながら言った。
「手紙にも書いたんだけど……」
「手紙?」
「あ、今日か、明日あたりに届くと思う」
「何が書いてあるの?」
「大したことじゃない。真衣のせいじゃない、私が弱かったんだ、私のことなんて忘れてよ、思い出ありがとう、幸せになってねってことかな」
礼奈が右手を伸ばし、真衣の左頬に触れた。冷たい温度が真衣に伝わる。真
衣の目から溢れる涙が礼奈の右手を伝わり流れる。
「私、もっと何かできたんだよ……」
真衣の言葉に礼奈は首を横に振り、「私の問題だよ」と言った。
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