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エピローグ
自身の誕生日にいじめていた相手に自殺されるという出来事に直面した彩の一家はひっそりと引っ越していった。彩にも何も言えないままだったと真衣はまた一つ後悔を増やし、残りの中学生活を過ごした。
それから月日が流れ、真衣は高校三年生になっていた。
右膝の故障はよくならず、高校ではバスケットをすることができず、マネージャーとして過ごしたが、真衣には新たな目標もあった。
東京の大学に進み、スクールカウンセラーになることが彼女の夢だった。志望校を目指し、受験勉強に励む日々だが、合格ラインにはいま一歩届いていない。
時折、真衣は机の引き出しにしまわれた色褪せてしまった手紙を開くことがある。
あの古い校舎の屋上で何が書かれているのかと尋ねたときに答えてくれたとおりのことが書かれている。
『大したことじゃない。真衣のせいじゃない、私が弱かったんだ、私のことなんて忘れてよ、思い出ありがとう、幸せになってねってことかな』
彼女の言葉には手紙には書かれていたのに、「足りない言葉」があった。
それはたまたま漏れてしまったのか、彼女が意図的に声にしなかったのかは永遠に確かめることができない。
ただ、真衣は今でもつらいことがあるたびに彼女が声にしなかったその言葉が書かれた文字を指でなぞってしまう。
『マイのこと、大好きだよ。』
そう書かれた文字をなぞるたび、真衣の中で何かが湧き上がってくる
消すことのできない後悔を受け入れ、いつか同じ状況に陥る人たちを救いたいという決意を胸に、真衣は顔を上げる。
「私も大好きだよ、あや」
そう告げて再び問題集に向かった。
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