20人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
*
その時、真衣は自宅で英語の予習をしていた。
机に置いたままのスマートフォンが鳴り出す。同じ部活の同級生からだった。明日の時間割でも聞きたいのかなと思い、その電話に出た真衣は思いもよらない話を、興奮気味で話す部活の仲間から聞かされた。
「嘘だ!」
電話越しに真衣は叫んだ。立ち上がり「どうしてそんな嘘をつくのよ!」と更に叫んだ。
普段怒ることのない真衣の叫びに同級生は電話越しで戸惑いつつも、
『嘘だって言うなら……テレビを観なよ! いま、テレビでやってるよ!』
と叫び返した。
その言葉とほぼ同時に一階の母が叫び声をあげる声が聞こえた。「真衣、これ、これって……!!」
何を叫んでるの!? 悪い予感を抱えつつ、真衣はスマートフォンを握りしめたまま、階段を駆け下り、リビングに飛び込むようにして駆け込んだ。
リビングのテレビには、古びた白いコンクリートの、見慣れた校舎が映っていた。
その画面から目を逸らせない真衣の耳に、ニュースキャスターの声が届いた。
『亡くなったのは、岡田礼奈さん、中学二年生。学校の屋上から飛び降りとみられ、警察では原因を――』
「あや……」
幼い頃から真衣が言い続けてきた彼女の呼び名は微かな音とともに空気に消えた。
最初のコメントを投稿しよう!