episode 11.《後編》 side;友翔

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「八捕さん、俺、パパにも報告したい。俺のためにこんなに泣いてくれる人と結婚するんだって、パパに自慢したい」 「そうだね。お父さんにも挨拶をしよう」  八捕は、綺麗に糊付けされたハンカチで、自分の目元と友翔の目元を拭うと、仏壇の前で「初めまして」と、母と義父にしたよりも深く頭を下げた。  仏壇の前に、隣に並んで正座をした八捕は、実父の写真をよく見ると言った。 「お義父さん。俺に、友翔をください。短い年月で、どれだけ友翔をお義父さんが愛してきたかは、友翔を見ていればわかります。友翔を遺していくことがどれだけ心残りだったかも、わかるなんて言ってしまっては不敬ですが、わかります。俺もそうなったら耐えられません。  これからは、俺がお義父さん以上に、友翔のことを愛していきますから。だから、どうか俺に友翔をください。これから先も友翔のこと、見守っていてください。よろしくお願い致します」  父の写真に向かって、生真面目に頭を下げる八捕の手を、友翔はそっと握った。 「パパ。俺、この人と結婚するね。八捕さんはね、すごく優しいの。高校生の頃から、俺のそばにいてくれた。パパよりお母さんより、優しいかもしれない。男の人でびっくりした? でもね、八捕さんはね、誰よりも俺の好きな人なんだ。お母さんと結婚したパパと、パパと結婚したお母さんと同じくらい、八捕さんとだったら、俺も幸せになれるんだ。ふたりみたいに子どもは産めないけど、俺は八捕さんとふたりで生きていくね。それから……また会いにくるよ。長い間、顔を見せられなくてごめんなさい。俺が悲しくなるくらい、愛してくれてありがとう」  『もう空へ行きたいなんて思わないから大丈夫だよ』なんて言葉は、心の中だけで伝えておいた。死にたかったことを、母と八捕には言いたくないけれど、父にはきっと聞こえているだろう。  母が後ろで、「修さん、よかったね」と泣いている。
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