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「そうかもしれない。彼のお陰でドクターが信じられないってわけじゃないことがわかった気がする」
「へえ、ドクターなんだ。誰よ」
いきなりニヤニヤしながら聞いてくる恭子に、私は慌ててしまう。
別に恭子に言えないわけではないが、相手が望月君と知られるのはなぜか少し恥ずかしい。
「また、そのうち話すよ」
「教えなさいよ!」
そんな会話をしながら食指をしていると、今日が窓の外を見て声を上げる。
「あっ、こんな話をしていたら望月先生じゃない? いつもと全く恰好が違うけど」
え? 恭子の言葉に私は反射的に外に視線を向ける。
そこには確かに望月先生がいた。今日は知り合いと会うと言っていたことを思い出す。
待ち合わせなのだろう。駅前でたたずむ彼はひと際目立っていた。
その理由は、今までみたことがないスリーピースのスーツを着ていたこともある。
「何か学会とか接待とかかな?」
何気なく言った恭子の言葉に、私もそうなのかと彼を見ていた。
「やばい、スーツもいいわね」
すでに妄想の世界に入っている恭子に、私はクスリと笑いながら確かにスーツもドキドキする。
そんなバカなことを考えていた私だったが、次の瞬間息が止まるかと思った。
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