紫色が消え、やがて○○も消えゆく世界

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20××年、地球から紫色という概念が消えた。消えることとなったきっかけは、ほんの小さなこと出来事だった。 近年、地球は気候や地形の変動により、今まで普通に生活していた生物たちが生きづらくなり、増えずに減る、生まれずに死すを繰り返し、数は減少していく一方だった。それは、人間も例外ではない。 元々狩りをする種族ではなく、体温調節は冷暖房器具に頼ることの多かった人間は、順応する能力が低い。水を取り合い、電気を取り合い、食料を奪い合い。結局生き残れるものといえば、圧倒的財力の持ち主か、恐怖により誰かを支配することができるだけの力の持ち主かだ。持っているものが少ない者から順に死んでいくのだ。 地球に住む生物たちにとっては、危機的なこの状況をチャンスだと思った者たちがいる。 それが、宇宙人だ…… 宇宙人の目的は、地球の第1生物になること、すなわち侵略である。 意外にも宇宙は長年、生活しづらい環境にあった。宇宙には、食料となる作物や動物が少ないにも関わらず、宇宙人人口は増える一方。(宇宙人は人間の3倍の生殖能力のあると言われている)さらに、宇宙災害が多いため、安心して暮らせる場所が少ない。 「いずれは、この宇宙を出なければならない」 そこで、宇宙人が移住先として目を付けたのが地球である。地球は、宇宙に比べたら災害は少なく、人間が作った設備や施設は頑丈で、安心して暮らせる場所が多い。宇宙人からすれば宇宙から地球は、そこまで距離も離れていない。宇宙人にとって地球は、移住先として好都合なのだ。 実は、これまでにも何度か宇宙人は、地球侵略計画のためにひそかに地球に偵察に来ていたのだが、いずれも偵察で終わり、侵略するまでには至らなかった。 1度目は、2021年。 人々が危機的状態に置かれていたこの年に、チャンスだと思い状況を伺うために数名の宇宙人が、偵察に来ていたが、弱っていると思われた人間たちが忍耐力と団結力を持って戦ったことで状況が持ち直したことと、人間たちの底力を見た宇宙人たちは、声を揃えて「今はまだその時ではない」と言った。 2度目は、2035年。 百獣の王と呼ばれ、生物界最強と呼ばれていたライオンが絶滅したという噂が宇宙人界隈で広まった。その真偽を確かめるべく、数名の宇宙人が、偵察に来ていたが、噂は全くのデタラメで、普通にライオンは生活していた。むしろ多いくらいだった。 「このままでは喰われる」と本能的に思った宇宙人は、逃げるようにして宇宙へと戻った。 過去2回、失敗に終わったが、今回は、人間やライオン、地球上にいる生物たちの数が減り続けている。やるなら今だ。 そう思い、宇宙人は、行動を開始した。 移動は全宇宙人が一斉に行うわけではない。徐々に徐々に、週に6000のペースで宇宙人が次々と地球に移動する。その徐々に徐々にを繰り返し、1年。数としては、地球にいる人間の約10倍程となった。 宇宙人は、侵略において、無駄な争い、殺生はしたくないと思っている。 暴力で解決をするよりも、話し合いで解決を する方が負担のかからないことを分かっていたからだ。宇宙という厳しい空間で何百年も代々生きぬいてきた宇宙人だ。ただの馬鹿ではない。 宇宙人はまず、第1生物である人間たちの中で、勝ち組の者たちに声を掛けた。 自分たちは、この世で不自由なく生活する方法、知識、道具を持っていることをアピールし、地球における第1生物の権利を譲ってくれるのなら、人間たちが快適に暮らせるようにできる限り援助をすると、人間と宇宙人の存を提案した。 尋ねられた人間たちは、即答で「うん」と答えた。報酬は貰えるらしいし、生きやすくなるのなら、断る理由なんてない。第1生物じゃなくなっても、困るのは自分たちではない。犠牲になるとすれば、弱きものだから、自分たちには関係ない。 本当に聞いて欲しい人間、都合の悪い回答をする人間たちには、いつだって質問されない。答えを聞いてもらえない。それは、いつの時代だってそうだ。 「交渉成立だな。では今日より、この地球における第1生物はわれわれ宇宙人となり、その長である我、ポテサラがこの国の王だ」 王ポテサラに対し、人間たちは、深く頭を下げた。 「ほほぅ。歓迎してもらえておるのか」 ポテサラは、この仕草の意味を分かっているようで、上機嫌であった。 こうして、地球における第1生物は、宇宙人となり、地球における王は、宇宙人のポテサラが務めることになった。
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