紫色が消え、やがて○○も消えゆく世界

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ポテサラを含む上級宇宙人には住み処として城が与えられた。城内には人間がプレゼントした綺麗な華や植物が飾られるという、人間側への配慮も見られた。 城内に置かれた紫色のアザレアの花を見た宇 宙人界の王 ポテサラが一言こう言った。 「あれ? この色、我に似てないか?」 「ええ、そっくりでございます。誠に美しい色をしております」  ポテサラは、全身汚い紫色をしていた。アザレアのような綺麗な紫色ではないものの、区分でいえば、同じ紫色である。 「こちらでは、この色を紫色と呼ぶそうでございます」 「紫色? ならぬ」 「我に似た、素敵な色が紫色などという不格好な名前ではダメだ。今すぐ変えよ!」 「かしこまりました。では、どのような名前に致しましょうか?」 「そうだな……今日からこの色は、ポテサラ色だな!」 悲しきことに、ジャガイモという食べ物はもう何十年も前に完全になくなってしまったため、この世界には、ポテサラ色に違和感を持つ者はいないのだ。 「はい、わかりました」 どこの世界でも王、権力者の発言は絶対。 複数人でする形上の会議も、誰かの許可を貰う必要もない。彼が黒と言えば白も黒になるし、紫色もポテサラ色になる。 「ではさっそくですが、現在よりこの色は、ポテサラ色と呼ぶことにします。地球上にいる全てのものにそう伝えます」 王がそう決めたことに、勿論宇宙人たちは従う。理由を気にするものも異を唱えるものもいない。返事は、「はい。わかりました」のみ。納得しようが納得しまいが関係ない、どちらが正しいとか間違いなのかは関係ない。王に従う、それが正解なのである。 この時代の第1生物である宇宙人は全て、ポテサラ色で納得した。第2生物である人間の代表者も賛成の意を示した。何故なら、紫色がポテサラ色になったところで自分たちの生活が脅かされるわけではない、害があるわけではない。異を唱える理由はなかった。 だが、人間たちは気付いていないのである。 この選択が大きな間違いであったことを…… 人間は、簡単に言うことを聞く生物だと思った宇宙人は、今後も次々と自分たちの都合のいい提案ばかりをしてくることとなり、人間もまた、どんな難題であろうとも全て「Yes」と答えるのである。 「地球における第1生物の権利を譲ってくれるのなら、人間たちが快適に暮らせるようにできる限り援助をする」という最初の約束もいつしか破られた。 名前だけは立派な支援策を掲げられるが、実際の所、宇宙人からの援助や支援は、あれこれ理由を付けられて滞った。 それが、1年、また1年と、徐々に徐々に人間の数が減り、人間滅亡へと進んでいくのだ。 それを知ってか知らぬか、赤色のチューリップの花は、綺麗に咲いている。いずれ、赤色を取られるまでは、赤色の花として一生懸命生きる。 ポテサラ色のアザレアは、綺麗に咲いている。紫色を奪われた今、ポテサラ色の花として一生懸命生きる。 突然、何かを失われたとしても、生き抜くための道を探し、精一杯強く生きる者は、長く生きられるのかもしれない。
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