22. もうすぐ春ですね

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 曽我先生がいつも飲んでるやつなんてもうとっくに覚えてる。  真似して飲んでみたけど、無糖だしガッツリ苦くて2回目買うことはなかった。だから今日が2回目。  来た時以上にダッシュで準備室に戻ると、先生は目許の腕を下したさっきと同じ体勢で目をつぶっていた。  ――あの時みたい。  そっと覗いた理科準備室で眠っていた先生。こっそりしてしまった秘密の行為。  無意識のうち、あの日と同じように音をたてず先生のとこへ歩いていく。  近くで見る顔は疲労のせいかあの日よりは影があって、でもそれはそれでアリ。やっぱりカッコいい。  知らず知らず、また唇に視線がいってしまう……。 「襲うなよ」    気が付けば覗き込むように顔を寄せその表情を見ていた俺に、目を閉じたままの先生がそう言った。 「……っ!」  驚いて弾かれたように身を起こす。 (――びっ……くりしたぁ)  あの時もホントは起きてたんじゃないよね!? って思うくらい驚いた。後ろめたいことがバレたみたいにドキドキしながら、買ってきた缶コーヒーを差し出す。 「ハイ。先生のおかげで生物ちょっと成績上がったから奢る」  閉じていた目蓋を開いて椅子に深く座りなおし、組んだ両手を天井に向け大きく伸びをした先生は、俺の言葉を聞いてハハッと笑い、 「気持ちだけ貰っとくわ」  そう言いながら、ジャケットの内ポケットから財布を出し小銭を取り出すと、立ち上がってコーヒーと引き換えに俺の掌にそれを落とした。  それがまた先生と生徒っていう距離を感じさせて、手の中の硬貨がなんかちょっと寂しく思える。
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