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21. 先生の気持ち
ちゃんと言いたかったことを伝えてから、神原は俺に絡んでこなくなった。
秋山もずっと気にしてくれてて、先生と俺のことまだヘンな感じで広まってるのかそれとなく探ってくれたけど、もうそんな話は聞こえてこないみたいだった。
先生の方は大丈夫かな……。
“気にせず来い” って言ってくれたけど、本当にそれに甘えていいの?
「――いいんじゃねえの?」
放課後、掃除当番が一緒になった秋山に相談してみた。以前同様、昼休み先生んとこ行っても構わないと思うか、ゴミを捨てに行きながら聞いた俺にそう答えが返ってきた。
「俺、思うんだけど、曽我絶対お前のこと目ぇかけてると思うよ」
「……え」
ゴミ捨て場で一緒に分別作業をしていた手が止まる。
「だって担任でもないし、養護教諭でもスクールカウンセラーでもないのに、そんな一人の生徒の相手してくれないだろ普通」
あらかた分別を終えると、残りを全部可燃ゴミの袋に入れながら秋山が続けた。
「しかも学年主任になんか言われてんだろ? そんなんもし俺だったら……。あ、気ぃ悪くすんなよ? 俺だったらそんな面倒くさいヤツ、もう来るなって言うわ」
(――そうだよな。俺でもそう思う)
「でも気にせず来いって言ってくれてんだろ? それすげえと思うぞ」
空になったゴミ箱を俺に押し付けて、秋山はスタスタと先に教室へ帰って行く。
「だからいいんじゃね? 会いたいだけ会いに行けば」
そして後ろを振り返ると、そう言ってちょと意味ありげに笑った。
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